東京高等裁判所 昭和29年(ラ)361号 決定
本件調停調書第三項によれば、相手方は抗告人に対しすでに受領した金員を返還して抗告人所有不動産についてその所有権移転登記手続の請求及び右不動産の引渡を求め得るものとされていることは明らかである。この金員の返還は右不動産の所有権移転登記及び引渡と同時になすべき反対給付であつて、両者は同時履行の関係にあるものと認めるべきこと、右調停調書の全体の趣旨からおのずから明らかである。かような場合相手方の側で、まず、反対給付である内金の返還又はその提供をした後にはじめて執行文の付与を受けるべきものとするときは、実質的に先給付を要求するのと同様の結果となり、両者が同時履行の関係にあることの趣旨から遠ざかるものといわなければならない。この故にかかる反対給付は相手方が現実に執行を開始するについての要件と解すべきであつて、かく解することによつてはじめて両個の給付の時期を能う限り一致せしめることができるのである。従つて本件において相手方の内金返還は民事訴訟法第五一八条第二項の条件にはあたらないというべく、相手方は本件調停調書について無条件に執行文の付与を受け得べきものである。